膝の痛みはヒアルロン酸では治らない？その理由と本当の治療法

2024/11/12

膝の痛みが気になり、整形外科を受診した際に「ヒアルロン酸注射をしましょう」と提案されるケースが多くあります。ヒアルロン酸は関節の動きを滑らかにし、痛みを緩和する役割があるため、膝の痛みの治療にしばしば用いられてきました。しかし「膝の痛みはヒアルロン酸注射では根本的には治らない」と言われることも少なくありません。ここでは、ヒアルロン酸注射の効果とその限界について解説し、膝の痛みを改善するためにどのようなアプローチが有効かを考えてみます。

ヒアルロン酸注射が行われる理由

まず、ヒアルロン酸とは体内の関節液に含まれている成分で、滑らかで弾力性のある液体です。関節内にヒアルロン酸があることで、関節の動きがスムーズになり、クッションのような役割を果たします。加齢や過度な運動により、関節内のヒアルロン酸が減少すると、関節軟骨が擦れ合い痛みや炎症が発生します。膝関節にヒアルロン酸を直接注入することで、関節の動きを滑らかにし、痛みの緩和を目指すのがヒアルロン酸注射の目的です。

ヒアルロン酸注射の限界と痛みの根本原因

ヒアルロン酸注射は一時的な痛みの軽減や関節の動きの改善には効果が期待できますが、膝の痛みの「根本的な治療」にはなりにくいとされています。これは、ヒアルロン酸注射が関節軟骨の損傷や変形を根本的に治すものではなく、症状の緩和に留まるためです。

膝の痛みの根本原因は、多くの場合「変形性膝関節症」という病気です。変形性膝関節症は、関節の軟骨がすり減り、関節の形状が変わることで痛みや腫れ、関節の変形が進行します。ヒアルロン酸注射を行っても、すり減った軟骨を再生させる効果はありません。また、変形した関節の形そのものを修正することもできないため、症状が進行するケースもあります。

ヒアルロン酸注射による副作用も考慮

ヒアルロン酸注射には、副作用のリスクもあります。注射部位の腫れや痛み、稀に感染症を引き起こす場合もあるため、注射を繰り返すことで膝関節に余計な負担がかかることも懸念されています。また、一定期間効果が持続するものの、数週間から数ヶ月で効果が薄れることが一般的であり、頻繁に注射を行うことが必要になる場合もあります。長期的に考えると、経済的な負担や身体への負担が増えることも問題となり得ます。

根本的な改善を目指すためには

膝の痛みを本当に改善するためには、ヒアルロン酸注射だけではなく、他の治療法も併用することが重要です。具体的には以下のような方法が推奨されます。

筋力トレーニング：膝関節の周りの筋肉を鍛えることで、関節への負担を軽減できます。特に太ももの筋肉（大腿四頭筋）を鍛えることで膝への負担が和らぎ、痛みが軽減することが期待されます。日常生活の中で無理のない範囲で筋力トレーニングを取り入れることが大切です。
体重管理：体重が増えると膝への負担が増すため、適切な体重を維持することは膝の健康に重要です。体重管理は、変形性膝関節症の予防にもつながります。
生活習慣の改善：膝に過度な負担をかけない生活を心がけることが必要です。例えば、長時間の立ち仕事や膝を酷使する運動は避け、膝に優しい運動（ウォーキングや水中運動など）を取り入れると良いでしょう。
リハビリテーション：理学療法士の指導のもとで行うリハビリテーションも、膝の痛み改善に効果的です。関節の動きを改善し、痛みを軽減する運動療法やストレッチを行うことで、痛みを和らげる効果が期待できます。
再生医療（PRP療法、幹細胞治療）：近年では、自己血小板血漿（PRP）を用いる治療法や幹細胞治療といった再生医療も行われており、関節軟骨の修復や再生を目指した治療法として注目されています。これらの治療法は、変形性膝関節症の進行を遅らせ、症状を改善する可能性が期待されていますが、まだ研究段階の部分も多く、専門医との相談が必要です。